南沢会卒業生大会の報告(2/2)

卒業生大会 礼拝

2021年度副委員長 橋本(J70)

 

讃美歌:294 1番・3番
聖書:「ローマの信徒への手紙12章1節~8節」(新共同訳)

昨年より続く新型コロナウィルス感染症の拡大により、学園に集まって卒業生大会を開けない中、皆様のお声を聴き、つながることができる場を作ってくださった方々に心から感謝いたします。

卒業生大会の礼拝を担当することが決まり、聖書の箇所を考えていた時に、ローマの信徒への手紙12章1節から8節の御言葉が心に浮かんできました。私たちはキリストに結ばれて一つの体を形づくっており、各自は互いに部分である。賜物に応じた務めを果たすことで、キリストの働きを進めることができる。この御言葉から二つのことを考えてみたいと思います。

一つは、学園と卒業生の関係についてです。自由学園とそこで学んだ私たちとの関係も、この御言葉に似ているように思います。卒業生の活躍の場は多岐にわたっており、皆さんがさまざまな分野で社会に貢献なさっています。卒業生が、社会の中でそれぞれの役割を果たす時、その姿を通して、私たちを形づくっている自由学園を知っていただく、それによってまた学園の働きを支えることができるのではないかと思います。

「学園の教育は人生の生地を織ることである」というミセス羽仁の言葉を、私は今も大切にしています。学園生活を通して織られた生地をどう仕立てるか、仕立てた服は生地の良さをいかせているか、時折考えます。私たちが仕立てた服を見た方々が、自由学園の教育を知ってくださり、学園に関心を寄せてくださるなら……と願っています。

もう一つは、互いのあり方についてです。今年、南沢会が発足し、卒業生会と同学会が一つの会となりました。同じ学園で学んだとはいえ、文化が異なる両者では、行事も考え方も違いがたくさんあります。これは男女の違いだけではないでしょう。女子部の卒業生同士であっても、世代の違い、背景の違いなど、異なる部分はさまざまです。しかし、違っているからこそ、互いの欠けを補い合い、また助け合うことができます。そこには、自由学園という共通のものが流れていることが大きいのだと感じます。

同志 同学 同行の友として根本に流れるものが同じ方々だからこそ互いにできることがあるのではないかと思います。

私は普段、自然界の仕組みを研究していますが、自然界ではどんなに小さな生き物でも役割を持っており、その小さな働きが集まって、大きな森や海を形成しています。そこでは相手を責めたり、偉ぶったりすることは決してありません。それぞれが自分の活動をし、その命を全うする中で、一つの生態系のつながりを生み出しています。

学園に連なる私たちも、それぞれの務めをそれぞれの場で果たしつつ、互いを尊重し合い、認め合いながら、自由学園という小さくも大きな学校を支える一部でありたいと願っています。


学園の近況

高橋学園長(D40)

南沢会の皆さま、本来であれば皆さまを自由学園にお招きして、創立100周年を記念する集まりを持ちたいと願っていました。ところがコロナ禍によりそれが叶いませんので、学校の近況を中心にお伝えします。

8月末、日本中で新型コロナウイルスの感染が一気に拡大しました。生活団と初等部は分散登校するなど工夫して2学期をスタートし、中・高等科、最高学部の3部は寮を開けずにオンラインで2学期を始めました。幸い10月に入って急激に東京都の感染者数が減ったことから、寮を開けて全校で登校再開としました。生徒たちの声が校内で響いているのはとても嬉しいことです。

創立記念日の4月15日、明日館講堂で記念礼拝を行いました。創立100周年を記念するさまざまな行事が行えない中、人数を制限しての小さな集まりでしたが、創立の地で感謝の礼拝を持つことができたのは本当にありがたいことでした。

100年前に書かれた「自由学園の創立」を告げる羽仁もと子先生の文章には、生徒一人ひとりが自ら学ぶ人になっていくことこそが最も大事であり、その人が、神と人を愛し、よりよい社会の実現に向かう人として育っていく、そのような学校を実現したいという理想が記されています。今私たちは、どんな時代にあっても変わることのないこの理想の土台の上に、あらたな学校づくりを始めています。

100周年に向けて取り組んできたことの一つに、若い世代を中心とする卒業生100人へのインタビューがあります。これはさまざまな分野で活躍している卒業生の生き方の紹介を通じて、自由学園の教育の多様な可能性を多くの方に知っていただきたいと願って始めたものです。自由学園のウェブサイト「自由学園100人の卒業生+」のコーナーで発表しています。先日、100人目のインタビューを終えましたが、歩む道はそれぞれ異なる皆さまが、共通して「よい社会を創る」思いを語られたことが最も印象的でした。多くの方々にご協力いただいたことに感謝申し上げます。

この取り組みと併せて、自由学園を紹介する2冊の本の制作を進めてきました。1冊は5月に婦人之友社から出版された『本物を学ぶ学校』です。坂本龍一さんや福岡伸一さんも寄稿してくださり、ノンフィクションライターの島村奈津さんが、コロナの状況下にある生徒たちの日常生活に入り込み、現在の学校の様子をいきいきと描いてくださっています。

もう1冊は、制作中の『自由学園一〇〇年史』です。次の100年に向かう自由学園の土台となるものを目指し、創立者お二人のご生涯から始まり、自由学園の100年の歴史を事実に即して編纂し、800ページの大部となりました。10年にわたる資料整理には、多くの卒業生ボランティアの方々にお世話になりました。ご尽力に心より感謝申し上げます。11月末、婦人之友社より出版予定です。

教育の現場では、コロナ禍だからこそ生まれたさまざまな取り組みもありました。その一つはインターネットを活用した授業の推進です。中・高、学部はもちろんですが、初等部でも教室と石巻市十三浜をオンラインでつなぎ、漁師さんたちから直接海の仕事を学んだり、ハワイの天文台から宇宙について学ぶ授業なども行われたりしました。

女子部男子部では、多様な人がともに学び合う学校を目指すその一歩として、2024年の共学化に向けて新しい取り組みが開始されました。

この4月に入学した中等科1年生は、男女合同での昼食づくりを始め、新しい教科「探求」や「共生学」も合同で行われています。生徒たちはごく自然に男女で協力し、ともに学ぶ新しい試みに踏み出しています。

最高学部では、自由学園らしい実学的研究が、学会発表につながる成果を上げています。よりよい環境教育の場の整備に向けて「新天地」の活用を目指す学生たちは、長く埋もれていた古井戸の再生や、名栗の植林地の材をいかして橋の架け替えを行いました。学部棟屋上に高精度な気象観測機器を設置したことを機に、有志学生による「水門・気象観測室」も立ち上がり、データの蓄積と活用が進められています。

大きな変化の時代ですが、今後も自由学園がよって立つところを明らかにし、生徒と教職員が力を合わせて、よりよい未来を担う人が育っていくにふさわしい学校づくりに取り組んでいきます。

コロナが収束して学校に集える日が来ましたら、ぜひ皆さま学園に足をお運びください。日々の皆さまのご支援に心から感謝いたします。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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